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第5回オープン・イノベーションに役立つCVCの活用法

2021.02.18

お知らせ

CVC投資による新規事業開拓の進め方

投資先ベンチャーとの協業の模索
CVC投資では、投資しただけでは意味がなく、投資後、いかに、投資先ベンチャー企業と協業するかが、ポイントとなる。

  • 共同研究

    自社にとって新しい技術を有するベンチャー企業に投資した場合は、その技術のPoC(Proof of Concept、概念実証)を共同で行っていくこととなる。出資の形で、資金提供するだけにとどまらず、必要に応じて、委託開発費を出すことも検討することとなる。
    なお、技術面での連携としては、自社が行っている製品開発・研究開発に欠けている技術領域を補完する補完型と、本来、自社内で行うべき研究開発のPDCAを代替してもらう代替型の2通りがある。これらについての代表事例のオムロンの事例については、KPMG FAS(2018)を参照のこと。




  • 優先的に開発をしてもらう

    (1)とも関係するが、投資することによって、自社が求めている製品開発を、優先して請け負って、実行してもらうということも、協業の一つである。
    とりわけ、AI(人工知能)ベンチャーは、現在、繁忙にしている先が多く、協業による新しい製品・サービスの開発をしようとしても、なかなか競合が多く、進まないこともある。そういう時こそ、CVC投資で、資金提供することで、関係構築をして、優先的にこちら側の希望するものを開発してもらうことは妙味がある。




  • 日本等での独占販売権の獲得

    投資先ベンチャーが海外企業である場合、日本での総販売代理店、つまり、ディストリビューターとなることは、重要な戦略の一つである。特に、排他的・独占的な日本での販売権・事業展開権を得られれば、成功しやすい新規事業にできる可能性がある。
    筆者は、米国カリフォルニアやシンガポール、オーストラリアでの投資活動をしているが、いずれの国のベンチャー企業も、総じて、日本市場を引き続き、魅力あるマーケットとして見ている。日本での販売代理店のポジショニングを取ることを想定した投資は、忘れてはならない海外投資における視点である。



投資先ベンチャーのEXIT戦略

CVC投資のEXIT(投資の出口)について、触れておくこととする。主に、次に記すようなパターンのいずれかを、EXITストラテジーとして、目指して、投資候補の探索、審査、投資後のフォローを行っていくこととなる。

  • ファンドの期限が来た後も、ファンドの持ち分を本体で買い取って、関係性を維持する。
    (独立したまま成長してもらう。)
  • ファンドの期限が来た頃に、経営陣や他の投資家の持ち分も含め、本体で100%買収する。
    (自社に内部化してしまう。)
  • 第三者に売却するか、経営者に買い取ってもらい、投資を手じまう。

  • 株式上場(IPO)する案件の場合は、上場後、市場で売却する。(一部、本体で保有し続けることもありうる。)
    なお、未公開株式は、流動性がないため、「リビング・デッド」(倒産もしないが、IPOもM&Aにもならない案件のこと)となってしまうことが、大きな課題の一つであることに留意しておきたい。

冨田 賢

Satoshi Tomita, Ph.D.

CVC JAPAN株式会社 
代表取締役社長

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